皆さん、こんにちは。
妊婦さんから新型コロナウイルスについての相談が何件かあったので、少し答えていきたいと思います。
症状は通常、ウイルスに感染して4、5日後に現れますが、人によっては長ければ2週間たってから症状が出ることもあるようです。
主な症状は次のとおりです。
●発熱
●空咳
●疲労感
●筋肉痛
●息苦しさ
あまり頻繁には起きないようですが、頭痛やのどの痛み、鼻水、嗅覚や味覚の異常が現れる人もいますし、吐き気や下痢といった胃腸の症状が出る人もいます。
ほとんどの場合は数週間たつと回復しますが、まったく症状が出ない人もいます。人によっては、肺炎、体の中の酸素不足、心臓病などの重篤な問題を引き起こし、死に至ることがあります。65歳以上の高齢者や、心臓病、糖尿病、肺疾患、がんといった持病のある人が、深刻な状態になりやすいようです。
妊婦の新型コロナウイルス感染については、専門家の間でもまだあまりわかっていません。いまわかっている限りでは、妊娠している人もそうでない人も、感染する確率に 変わりはないようです。重症化(肺炎などが起きること)についても差はないようです。妊娠中に新型コロナウイルスに感染しても大部分の方は出産までには回復しています。
発熱や咳、息苦しさがある場合は、かかりつけ医や妊婦健診を受けている産科に 連絡をしましょう。どうしたらいいのか、また実際に診てもらう必要があるのかを教えてくれるだけでなく、感染の有無を確認する検査を受ける方がいいのかどうかも教えてくれます。
専門家の間でもまだはっきりした答えは出ていません。胎児の間(おなかの中にいる間)にうつることは考えづらいようですが、出産後にお母さんからうつる可能性はあるようです。
いまのところわかっているのは、妊娠中に感染しても深刻な問題になる人はあまりいないということです。とはいえ、妊娠中に重い症状が現れたら話は別です。
新型コロナウイルスに感染した妊婦の場合、早産する可能性が高くなります。早産というのは妊娠37週目に至るまでに出産することです。新型コロナウイルス感染症が重症化して肺炎が起きてしまうと、早産する可能性が高まるようです。あまり早い時期に生まれると重い健康上の問題を伴うことがあるため、早産は危険です。
新型コロナウイルス感染症に特化した治療法はまだ知られていません。軽症であれば回復するまで自宅で過ごせます。ここでいう軽症とは、発熱や咳のような症状はあっても、息苦しくはない状態です。
ただ、重い症状のある人や持病のある人は病院に行くことが必要となります。通常は妊娠中の方は37.5℃以上の発熱が2日間以上続く場合はかかりつけ医への相談が推奨されています。ただし、症状がそれほど重くない場合は、まずは電話相談でもいいと考えます。入院する必要があれば、医師や看護師が赤ちゃんの体調も常時確認してくれます。
新型コロナウイルス感染症に効果のある治療法を見つけるために、専門家は現在、複数の治療法を調べているところです。場合によっては、医師からこういった治療法を試したり治験への参加を勧められたりするかもしれません。治験というのは、新しい治療薬の効果を調べる科学的研究のことです。ただ、薬の中には妊婦には安全でないものもあるので注意が必要です。
新型コロナウイルス感染症にかかると熱が出ることがよくあります。妊娠中に熱が出たときの対処法については医師、看護師、助産師などにお尋ねください。 アセトアミノフェン(商品名;カロナール)は解熱に使えて、妊婦にとっても一般的に安全な薬です。
かかりつけの産科などが健診日をいつにする方がいいのか一緒に考えてくれます。新型コロナウイルス感染症が流行している地域にお住まいだと、何らかの変更があるかもしれません。たとえば、
●健診日のパートナーの付き添いを断られるかもしれません。
●新型コロナウイルス感染症の症状が一つでもあれば、健診の際に医療用マスクを付けることがおそらく必要になります。
●何度も検査を受けに行かなくてすむように、医師などが必要な検査をまとめて受けられるようにしてくれるかもしれません。
●健診の一部で電話やオンライン診療を提案してくれるかもしれません。
こういった変更にはストレスを感じるかもしれませんが、ご自身と周囲の人たちを守るためであることを忘れないでください。
新型コロナウイルスに感染しているときに陣痛が起きたら、医師や看護師が妊婦の周囲の人を感染から守る対策をとります。たとえば、状況が許せば妊婦に医療用マスクを付けてもらいます。経腟分娩を予定していたのであれば、おそらくその方法での分娩は可能と思われます。感染したからといって、帝王切開が必要となるわけではありません。
ただ、出産後は、新型コロナウイルス感染症から回復するまで赤ちゃんを抱っこすることはできないかもしれません。赤ちゃんを胸に抱けないのはつらいと思いますが、これが赤ちゃんを感染から守る最善策であると現時点では考えられています。
恐らくは出産する施設(病院)によっても多少の基準が異なる部分があると思いますので、適宜お確かめください。
新型コロナウイルス感染症が急拡大している地域にある医療機関では、立ち会い出産の決まりを設けているところもあります。それについては担当の医師などが説明してくれます。パートナーが出産に立ち会えなくても、電話やビデオチャットを使って励ましてもらうことはできます。
医療機関よりも自宅で出産する方が安全かもしれない、と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。自宅出産に興味をお持ちなら、医師などに相談してみてください。 覚えておいていただきたいのは自宅出産にもリスクはあるということです。
母乳で育てることは、お母さんにとっても赤ちゃんにとってもメリットがたくさんあります。ただ、新型コロナウイルスに感染したお母さんの母乳から赤ちゃんに感染するかどうかは、今のところわかっていません。
母乳でも育児用ミルクでも授乳するときと抱っこするときは普段以上に慎重になってください。母乳から新型コロナウイルスがうつるのかどうかは専門家の間でもわかっていませんが、近くで接することで赤ちゃんにうつすおそれがあります。こまめに手を洗い、授乳するときにはマスクをつけて、赤ちゃんに感染させないようにしましょう。
搾乳器を使って母乳を飲ませるという手もあります。感染している場合は、搾乳する前に手をよく洗い、搾乳する間はマスクを付けるようにしましょう。搾乳器の使用前後は、できれば感染していない人によく洗ってもらってください。
新型コロナウイルス感染症のことで不安になったり、憂うつになったりするのは当然のことです。赤ちゃんの誕生祝いを中止して身内や友だちに会えないのは、妊婦さんにとってつらいことかもしれません。
そんなときは次のようなことを試してみて、ご自身を大切にしてお過ごしください。
●ニュース番組を見るのはほどほどにする
●定期的に運動して栄養バランスのとれた食事を心がける
●家の中で楽しんでできることを探す
●友だちや家族と連絡を取り合う
新型コロナウイルス感染症にかかったとしても、ほとんどの人は軽症ですむことを忘れないでください。もしものことを考えて心の準備をしておくのも大事ですが、自分自身が感染しないようにし、感染拡大を遅らせるためにできることが大事です。ただ、パニックに陥らないようにしてください。
最後に、新型コロナウイルスに関しての情報は日々変化しています。まだ確定している情報が決して多いわけではありません。
変更点などがあれば、適宜アップデートしていきたいと思います。他に質問があれば遠慮なく聞いて下さいね。
この緊急事態宣言・外出自粛期間に、皆さん一人一人ができることをやっていきましょう。
板垣亮平